今日は教育のトライのお話。

チームとしての目標
訪問看護ではたくさんの職種と連携しながらケアを行っています。病院の時も他職種では連携していたと思います。看護師、理学療法士、医師、薬剤師、栄養士、ME、SWなどなど、話し合いも連携も多くしてきたし、他職種連携ってこれだなと実感を持ってケアを行っていました。
しかし、在宅の他職種連携は桁が違うなぁと感じたのが、訪問看護の最初の感想でした。
病院の中では「同じ病院に勤めている」という大前提がある方がほとんどです。医療従事者ではなくとも、ある程度の常識は同じで、当たり前の前提や考え方に多少相違があっても、そこまで大きいものではありません。医師の決定権も強いものではあるし、いざこざが起きても、医療従事者と、現状を分かっていない家族、のような対立構造であることが多かったように思います。
それは病気を見ている病院という立場の強さを、私が行使していた結果なのかな、と今振り返ると思います。
在宅ではケアマネージャーを筆頭に他職種が連携しますが、見ている景色も、前提も全く異なる他職種で構成されます。
在宅ケアの中心となるケアマネージャー、障がいのサービスを整える相談員、室内環境を整えてくれる福祉用具、動くのが困難でもお風呂の希望を叶えてくれる訪問入浴、一番身近で細やかなサポートのヘルパー、いつでも迅速に対応してくれる訪問診療、処方内容に対応し、残薬の管理をしてくれる訪問薬局などなど。
近隣の方々や親戚、そしてもちろん同居の家族、旧友や自治会の皆様、ボランティア関連の方々などインフォーマルサービスも多数あり、名前だけ並べてみても多くの方々がいらっしゃいます。
人数としても在宅医療は多いですが、視点の数が非常に多いことが特徴的です。
知っていることはもちろん異なりますし、知らないことも異なります、何が共通事項かというと、利用者さんの基本情報は知っている、という数少ないところかなと思います。
医療の話をしても、よく分からない人もいる。福祉サービスの設定の相談しても、よく分からない人もいる。生活の福祉補助具の種類を話しても、よく分からない人もいる。食材の切り方や好き嫌いについて話しても、よく分からない人もいる。
分かるところも独創的ですが、分からないところも独創的であります。それは話し合うこともありますが、各々の強みを活かして頑張っていきましょう、という役割分業でもあります。
手段の選び方
各々が役割を分担し、自分の役割を遂行していると、やはり独りよがりの仕事になってくることもあります。病院では看護師一人でずっとケアを行うことはありませんが、訪問看護は担当看護師がケアの責任を担います。
訪問診療も相談には乗ってくれますが、実質的なケアとなると看護師が判断し、行動することがほとんどです。
そうなってくると目標は利用者さんのより良い在宅生活を守ることにはなっていますが、他の職種の仕事に無知であると、独りよがりなケアになってきてしまいます。
介入時間はどう決められているのか、福祉用具はなぜこれが選択されたのか、サービスを設定する上での単位数はどうなのか、サービスの依頼から介入までの時間軸はどれくらいなのか、などなど自分の担当する訪問看護とは全く異なるサービスの理解が必要です。
でなければ、なんでヘルパーって提供票の時間通り来なかったんだろう、手すりも備え付けじゃなくて設置にして欲しかった、もっとデイサービス増やしてもらわないと臥床時間が長すぎるよ、なんで訪問入浴依頼して、介入に1ヶ月もかかるの、なんて苛立ちを抱えかねません。
ヘルパーにあ身体介護と生活介護があること、ご家族と話しながら訪問時間を設定してくれること。住宅改修費が出るタイミングが必ずしも一番必要としている時ではないこと、単位数上、優先されるサービスを全て入れられる訳ではないこと。訪問入浴は人気のサービスで、行ってくれる業者も少ないことなど、色々な知識と、それに関連する理由が混在しています。
優先順位の差
持っている知識、みている景色、前提としている常識、それが全部異なってしまえばもはやそこはパラレルワールドです。
ですが、必ず利用者さんの世界には他の方々が残してくれたキラキラした気遣いが必ず落ちています。その輝きに包まれながら行うケアはとても幸せです。
でもその輝き同士が反発してしまうこともあるのです。
利用者さんはショートステイに行きたくない、ケアマネージャーは家族のレスパイトを考えていってほしい。ご家族は杖で生活してほしい、理学療法士は転倒のリスクも考え歩行器にしてほしい。ケアマネージャーは自宅で入浴させて欲しい、看護師は自宅での入浴はもう限界と感じている、なんて具合です。
それはなぜかというと、目標が同じでもそこへの到達手段が異なるからです。それは非常に当たり前のことで、それで起きる反発こそ、他の職種の気遣いが分かるものでもあります。
だからこそ利用者さんにこうなってほしい、そうなるには…のお互いの前提や常識の差、そこから生まれる優先順位の差に着目していく姿勢が必要になります。
全ては利用者さんのことを思っての行動です。キラキラした気遣いは必ずや、利用者さんの生活を輝かせてくれると信じて他職種連携は行っていきたいと思い、事業所でもどうしてその差が生まれるのかをよく話しています。
そんな私の根拠のない、教育のトライのお話、でした。


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